ドイツW杯はイタリアが優勝して終わりました。ロベルト・バッジョ(ロビー)が現役だった頃、大好きなロビーとロビーがプレイしているイタリアチームを応援していました。
最初に彼のプレーを観たのは90年イタリアW杯。テレビでアズーリのユニフォームを着て、ゴールを決めて走り仰向けに寝転ぶバッジョの姿は今でも鮮明に思い出します。そのときからバッジョのプレイに惹かれてしまいました。2004年5月に引退してからも記憶から消えることのない選手。そして4年に一度のW杯が巡ってくるたびに思い出されてしまうW杯でのロビーの姿。
この本は2001年にイタリアで出版され、2002年に邦訳が出ています。この度文庫化されたのと、ドイツW杯の決勝で消化しきれないモヤモヤがあったので、通勤時にカバンに入れて読み返しました。
出版社の社長がインタヴューし、バッジョが答えるといった形式が8〜9割を占め、ロビーの回想や想いを綴った部分が混ざった編集になっています。
内容はロベルト・バッジョの幼少時代からアメリカW杯後までのサッカー人生、度重なる怪我、所属したチームでの出来事、サポーターとのこと、監督のこと、そして確執。お父さんから影響を受けたハンティングについてなども交えながら、彼のサッカー観、人生観、夢などが、奥深いことばで語られていてロビーの人間性が、よくも悪くも真直ぐに伝わってきます。
アメリカW杯のこと、忘れられないプレーや感動のゴールのことは、ロビーのプレーしている姿が目に浮かぶようでした。そして、彼の悪戯ぶりを書いたあたりは笑えたし、茶目っ気たっぷりで、意外ではないけど、新たな一面を知ることができて嬉しかった。
出版したリミナ社の社長のインタヴューは相当に率直で、時に辛らつに切り込んでいて、歯に衣着せぬ直球の質問が投げ込まれています。それに対して、ロビーも率直に言い返したりしながら、誠実に真摯な態度で答えているのも、賛否に意見が分かれたようですが、よかったと思いす。
ドイツW杯の後に読みたくなったのは、ロビーのサッカー選手としての夢が語られている部分があって、彼の言葉を確認したかったから。記憶にも新しい決勝戦のジダンの退場、その原因となったマテラッツィの暴言事件。すごく後味が悪かったのと、リッピ率いるイタリアの優勝という結果にモヤモヤしてしまったのです。
ロビーはこの本でサッカーを続けられたのは「情熱と喜び」だと言っています。そしてそれを職業にしたときが問題だと。
「情熱が仕事に、ビジネスに変わってしまう。そうなると全てが変わる。ぼくの幸運はビジネスと胡散臭い権力者が幅を利かせて、酷くなる一方のサッカーの世界で、情熱の炎を消すことなく戦って来れたことだ」
EU外選手枠廃止、ドーピング、クラブの健全化、サッカーの未来、サッカーを巡る利害などに触れつつ、子供の頃に抱いた夢を抱き続けのは難しいとも言い、大人になっても抱いている情熱は飼いならさなければならないと。現実に向き合って妥協しなければサッカーを続けることが難しいという環境になっているのだと語っています。
サッカーの未来は真っ暗だと言いつつも、ロビーは自分の理想のサッカーを語り、そして将来の夢である、子供たちに教えるサッカースクールについて
。「子供たちにサッカーを教えられたらいいね。情熱を悪徳に変えてしまうサッカーの現実から、ビジネスから、子供たちを守るためにも。」
ジダンやマテラッツィは氷山の一角でサッカービジネスの世界では、子供たちやサポーターの知らないことが起こっているのかもしれません。目を背けようとは思いませんが、夢を持っている子供たちを守るために教えるということを、是非力強く粘り強く続けていって欲しいと思います。
さて、この本には彼の趣味として有名なハンティングについても、皮肉たっぷりな社長の質問とロビーの答えが数ページに渡って書かれています。狩りに対する否定的な質問にロビーは父とのコミュニケーションの歴史と狩りへの想いを語っています。
はっきり言ってロビーは詩人です。彼の狩猟についての表現は詩的で優しさに溢れていて、サッカーだけではない、ロビーの豊かな人間性を感じさせてくれて、ヨーロッパの文学作品を読んでいるようでした。
私と同じようにW杯の決勝でモヤモヤした方は読んだら気分が晴れるでしょう。
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